淫魔の王

本編
痒みに侵されながらの触手肛虐出産 - 2
傾向:連続絶頂/濁点喘ぎ/触手出産/痒み責め

「いっ、つ⋯⋯やめろったら! 離せっ! この⋯⋯っ」
 どうにか逃れようと身を捩るザックを触手たちはギチギチと締め上げてきた。
 肉に食い込むほどの力だ。ザックは空中でうつ伏せにされ、足を折って尻を突き出すような姿勢になった。下穿きを引っ掴んで下ろされ、無防備な後ろへつぷつぷと細い触手が数本入り込んでくる。
「っは、うぅ⋯⋯っく、ふっ⋯⋯」
 湧き起こる異物感と、分泌された粘液の効果で高ぶり始めた肉膜を優しく擦られる快感に、ザックは眉根を寄せて息を詰めた。赤くなった耳へと触手が入り込み、舐めるように滑ると、ザックは鳥肌を立てて背を反らす。
 腹の奥へと到達した触手たちは更に奥へと進んでいった。結腸の広がりを確かめるように上ったそれらは、ちょうどへその下あたりまで到達すると満足したように動きを止める。
 奥の奥で、白濁した汁をどぷりと吐き出す。空間を埋め尽くすように流れ込んだそれらを丁寧に襞へ塗り付けながら、細い触手はゆっくりと引いていった。
 菊門から一斉に抜けていくそれらには柔らかな繊毛がびっしりと生えている。抜けていく瞬間に窄まりを刺激されたザックが甘えるような蕩けた声を上げた。
「ふっ、あ、ぁっ⋯⋯あぅっ、ぁ⋯⋯ッ!」
 複数回に渡る肛虐を受けてすっかり性器と化したそこは、指よりも小さな触手を咥えただけできゅうきゅうと旨そうに吸い付いた。触手がすっかり出ていくと、ぽっかり空いた口が切なげにひくついたが、そこへ太いモノが押し当てられるとザックはびくりと身を強張らせる。
 少しでも前へ行こうと不自由な腰を揺らす。それがまるで襞に先端を擦り付けているような淫猥な動きになっていることに、ザックは気づいていなかった。
「ぁ、待て、待って、やっ⋯⋯っあ゛! ほっぉ、お゛う゛っ⋯⋯んぐぅぅう゛っ!!」
 まだ解れ切っていない穴を無理矢理にこじ開けられる。限界まで伸びきった襞をこそぐように、極太の竿が芋虫じみた動きで体内へと押し入ってきた。圧迫感に呻いたザックだったが、開発された悦点を強かに擦り上げられると途端に全てが快感に上書きされる。
「お゛ほぉおッ! ぁお゛っ、おッ、お゛んっ! んん゛ぉ、んふっ、ん゛んんッ⋯⋯~~っ!?」
 ずぶずぶと、どこまでも深く潜っていく触手。ヒトの限界を超えて侵入する凌辱の先端は、やすやすと最奥を曲がって結腸の膜を抉った。それでもなお止まらずに上り詰めていく質量に消化管を押し上げられて、ザックはえずきながら身を震わせる。
 唇からぽたぽたと唾液が落ちていく。へその下で止まった塊の重みで息を吸うのさえ苦しかった。浅い息をつくザックにまるで頓着せず、触手は次なる責めへと移っていく。
「ッお゛! っが、あがッ⋯⋯はっ、ぎ、ぃぎっ⋯⋯待ッ、入、らなっ⋯⋯!!」
 ぼこりと膨れた硬質な塊が、触手の中を伝って体内へ入り込もうとしている。拳ほどもあるのではないかと思う大きさで、アールの規格外の一物に貫かれた経験を持つザックでさえ冷や汗が噴き出してくるほどだった。
(む、むり、無理ぃっ、裂けるっ裂けっ⋯⋯あ゛があぁァッ!! 入らないぃ、入らないってぇえ゛ッ!!)
 必死にのたうつが、それは触手の拘束を強めるだけだった。腿の付け根に巻き付いた触手たちがギリギリと音を立てて身体を固定し、わずかに埋め込まれた塊がごく低速に奥へと進む。直腸の襞という襞を抉り潰すそれに、ザックは中が張り裂けそうな恐怖もあいまって見も瀬もなく泣き喚いた。
「は、はひっ、はぃら゛なっ、ぁがッ⋯⋯ぎっ、ヒッ、ひぃっ⋯⋯ひィぃい゛ッ!!」
 グッ、グッと容赦なく押し込まれていく。ザックがどれだけ首を振って拒絶を訴えても、触手たちは冷酷なほど無関心だった。奥にこつりと当てられ、そこから更に進ませようとしていることが分かると、ザックは鼻水を垂らして階段を見上げる。そこは暗がりのままで、どんな光明も灯さなかった。
「ぁ、アールッ、アールぅッ!! 無゛理ッ、裂ける゛、死ぬ゛ッ、ほんとに死ッ⋯⋯がッ!! っぐ、ォ⋯⋯ほォッ⋯⋯オ゛ッ⋯⋯お゛ゥおオ゛ォぉお゛ェッ!!」
 ごちゅっと捻じ込まれた感触。真っ直ぐな直腸を越え、横道に逸れた塊が今度は胃の下まで上がってくる。度重なる衝撃に耐えかねた消化管が遂に痙攣し、ザックは昼に食べたばかりのものを未消化のまま盛大に嘔吐した。
 肉や穀物がドロドロに混ざった体液が触手たちに降りかかる。それらは頭上から落ちてきた食物を受け止めて啜り、もっと求めるようにザックの口へとすり寄ってきた。
「う゛っ、ぶぇ、ェッ⋯⋯も゛、出な、でなっ⋯⋯ん゛ぉお゛ッ! らえ゛、や゛えへっ、やめッ⋯⋯んん゛っ!」
 歯列を割って触手が突き入ってくる。口腔に残った残渣を舐め取りながら敏感な上顎を優しく撫で上げた。胃まで入ってくるのではないかと恐れていたザックは内心ホッとしたが、ぶくりと口の触手が膨らむと慌てて吐き出そうと頭を引いた。しかし後ろ頭は触手で支えられており逃げ場がない。
 ぬるぬるとした生臭い液体が口の中に広がった。舌で結い留めようとするが、無駄な抵抗だと言わんばかりに触手の先端が喉へと突き立てられる。強制的に流し込まれる液体にむせ返ったザックの胃が再び痙攣した。が、今度は通り道が塞がれており、吐き戻すことはできなかった。
「ォぼぉお゛オ゛ッ!! お゛ふッ、ォへっ、お゛ごォおッ!! お゛ぅ、え゛へェッ⋯⋯う゛ぶェッ、え゛ぶう゛ぅぅう゛っ!!」
 胃がいっぱいになってもなお注がれる。溢れ返ったそれは胃の括約筋をこじ開け、無理矢理に十二指腸と喉へ広がった。ザックはあまりの息苦しさに泣きじゃくって悶えたが、触手はザックが反射的に嘔吐しなくなるまで食道に居座って蓋をする。ようやく胃の痙攣が止み、触手が口から出ていく頃には、ザックは真っ赤になった顔に汗と涙を伝わせながらぐったりとしていた。
「ひっ⋯⋯っ⋯⋯ひぃっ⋯⋯ぐすッ⋯⋯あ゛ッ!! うそっ、も゛、⋯⋯お願⋯⋯っ!」
 腹の奥まで塊を届けた太い触手が、その幹を波打たせている。尻のふちに触れている竿がボコボコとかえしのような凹凸を備えたのを感じた。
 身構える暇も与えられず、極太の触手が腸壁をすり潰しながら一気に抜け出ていく。
「ヒッ⋯⋯――ン゛ッほォ゛ぉお゛ッお゛ォぉオ゛オ⋯⋯~~ッ!! お゛ォっ、ヒギッ、ヒィッ、い゛ひっ、ぃ⋯⋯ぃぃん゛ッ⋯⋯あ゛ひっ⋯⋯ひィぃい゛⋯⋯ッ!!」
 開発され切った前立腺を長大な幹が際限なく刺激する。脱腸の恐怖すら覚える太すぎるモノを出し切った排泄の悦びに、ザックは脳髄を焼かれながら強烈に絶頂した。一回ではとても衝撃を殺しきれず、二度、三度と余韻で果てる。尻の潤んで腫れた肉膜はパクパクと力なく開閉し、その度に涎のようにさまざまな粘液を噴いては垂らした。
(ヒッ⋯⋯ひぃっ⋯⋯イ゛ッ、た⋯⋯イくっ⋯⋯い゛ひっ⋯⋯尻、で⋯⋯イ゛ッ⋯⋯ッ)
 カクカクと情けなく震える。善すぎておかしくなりそうだった。腹にはいまだ塊が埋められており、皮膚の上からでも薄っすらと膨れているのがわかる。これから自分の身になにが起こるのかが全く理解できず、ザックはようやく戻ってきた意識を頼りに途切れ途切れに思考した。
(ふ、殖やす⋯⋯殖えるって、アールが。どういう⋯⋯触手⋯⋯殖やす⋯⋯っ?)
 見下ろせば、触手たちがなにかを待つように水音を立てながら蠢いている。ザックの全身に張り付いているものは少なく、いてもほとんど動いていなかった。
(なんで、何もしてこないんだ⋯⋯? 腹に⋯⋯なんか、入れられ⋯⋯んう゛ッ!?)
 ぶるっと奥の塊が震えた。その振動は全身へ伝わるほどで、なにかの前触れを感じたザックが怯えるように身を竦ませる。ほどなくして身体がジワジワと熱くなりはじめた。
 奥が、尻が、腹が熱い。爪先まで逆上せたように赤くなる。空気に触れるだけで思わず跳ねてしまうほど過敏になっていた。浅く息を吐きながら目を白黒させるザックだったが、尻の奥からなにかがゆっくりと伝ってきたのを感じて思わず感覚を集中させる。
 それは蜂蜜よりも粘っこい、糸を引く白濁した汁だった。奥の奥から溢れてきたためか、粘膜の襞という襞を舐めるようにして落ちてくる。液体というよりは固体に近いほどで、敏感になった肉の筒を優しく撫ぜるような動きに頭が茹った。声も上がらないようなのろさだったが、それだけに焦らされているような気持ちになる。ザックは無意識にいきんで少しでも早く排泄しようとしたが、溢れる液体はまだまだ止まりそうになかった。
「っは、ぁ、はぁっ、はぅっ⋯⋯っ、ん⋯⋯ぅっ、んんっ、ぁ⋯⋯!」
(ああッ、もどかし⋯⋯んんん゛っ! は、もっと⋯⋯なんでっ、こんな⋯⋯あつい⋯⋯熱い゛ぃぃっ!)
 ぼとっ、ぼとっ、と大きな雫になって床へ落ちていく。触手たちは熟れていく獲物を前にしてじっとしたままだ。いつもなら好き勝手に中を抉り、良いところも駄目なところもおかしくなるぐらいに押し潰して遊ぶというのに、今回ばかりは一向に反応を示さなかった。
「な、なんでッ⋯⋯なんで⋯⋯はやくっ⋯⋯! もうッ早くぅぅっ⋯⋯!!」
 急かすように詰ってしまう。静かな地下室に思いのほか大きく響き渡ったそれに羞恥心を覚えたのか、ザックは唇を噛み、気まずそうに視線をうろつかせた。
 沈黙に耐えるため、ザックは他のことでも考えようと目を閉じる。アールが言っていた結界の消失は、本当ならば一大事だが、果たして教会がそれを民に知らせないことがあるだろうか――そこまで思ったところで、ズクッとなにかが身体に走った。
 腹の奥からじわじわと謎の感覚が広がっている。それがなにか咄嗟には判断できなかったザックだったが、伝い落ちる粘液に撫ぜられたことで震えるような心地よさと物足りなさ、更なる焦燥感が湧き上がってきたのを感じ、そして唐突に理解した。
(か、痒い⋯⋯腹の奥がッ⋯⋯し、尻の穴もっ、ぜんぶ、ぜんぶ痒い⋯⋯痒いぃぃっ!!)
 分かってしまえばその掻痒感は一気に強まる。ザックは全身を軋ませながら、襲ってきた無慈悲な痒みに歯を食いしばって悶えた。
 そう、ザックが腹に産み付けられたのは触手の卵だった。外殻は体内に入るまでは硬いものの、一定の温度に長時間曝されると融解し始める。そして事前に塗られた触手の精子を受精して変質するのだ。
 腹の奥から垂れてきた固形物のような液体は融けた殻で、宿主に計り知れないほど凶悪な痒みをもたらす地獄の媚薬だった。産まれたばかりの未熟な触手でも蠢くだけで思うまま快感を貪れるそれは、常人なら発狂しかねない掻痒感を延々ともたらし続ける悪夢のような代物だ。
 ザックもほんの数分だけは健気に声を殺したが、すぐに耐えかねて口を開くことになる。
「――っ痒い゛ィいぃいッ!! 痒い゛っ痒いッア゛ぁァ゛アああ゛ッ!! 掻いてッ掻いてくれ頼むがらッ!! なあっ痒いんだってえ゛ぇえっ!! 掻いでッ!! あ゛ァ゛あッ!! 早ぐう゛ゥぅう゛っ!!」
 絶叫と共に跳ね上がり、拘束を引き千切らんばかりにもがき始めたザックだったが、触手たちは想定済みだったのか各関節の縛りを強めただけだった。筋肉の痙攣ぐらいしか許されなくなったザックは、爛れた粘膜から立ち上ってくる耐え難い痒みに限界まで目を見開きながら吠え立てて、動かない触手たちに絶望したような表情を浮かべた。
(痒い、痒い、痒い痒い痒いィッ!! 嘘だろッこれいつまで、いつまでッ!!? 嫌だ、嘘だっ、イヤッ⋯⋯嫌だぁあ゛あぁッ!!)
 体内から溢れてくる粘液はむしろ多くなっている。真っ赤に焼けた肉の膜をスリスリと隙間なくなぞってくる動きと、その液自体が引き起こす脳まで溶けそうな掻痒感。ふたつの責めは交じり合って終わりがなく、ザックの金切り声は地下室の隅から隅までわんわんと反響した。
「掻゛いでッ!! 掻いてぇぇえ゛っ!! お゛ねがっ! お゛ォ、お゛ねがひっ!! も゛ぉだめ、しぬ゛ッじぬ゛ぅ゛ぅうっ!! ごべ、ごめんなざっ、だずけっ⋯⋯なんでもいぃがら入れでっ!! なんれ゛もいいがら゛ァあ゛あぁッ!!」
 ザックのおねだり、というにはあまりにも切羽詰まった嘆願を触手たちはどう思ったのか。屯する群れのうちでもごく細い、小指の爪のような一本がするすると上ってきた。
 それが腫れ上がった穴のふちを触れるか触れないかというところでくるっと一周すると、ザックは舌を突き出してむせび泣いた。 「きッひぃ゛ぃい゛イ゛っ!! はひィっ、ひん゛っ、あ゛へっ!! も、も゛っどぉぉッ!! も゛っと掻いでッ、掻い゛でッ、かいて、くら゛ざッ⋯⋯がゆい゛ィぃい゛ッイ゛ヒィい゛ぃぃい゛ッ!!」
 触手たちは鼻水を垂らして哀願するザックを嘲るように身をさざめかせる。細い一本は弄ぶようにつん、つん、とそこをわずかに啄み、壊れたように収縮するさまを愉しんだ。羽で撫でるような些細な刺激でも今のザックにとっては束の間地獄を忘れることができる救いの手だ。遊ばれているのがわかっていてもそれに縋らずにはいられなかった。
 触手が言葉を解しているのかも不明だったが、ザックは堪らず礼を述べ、更なる愛撫を惨めに請い願う。
「ぁりがどぉございまずぅ゛ぅっ! しっ、尻穴撫でてもらえてうれひっ、きっ、きも゛ぢィイでずうっ!! もっど掻いでっ!! 掻い゛てほしっ⋯⋯ごめんなざっおねがいじまずゴリゴリしてェッ奥も゛ぉ、こわれッ、痒ぃ、かゆぐでも゛う⋯⋯もぉぉ⋯⋯ッ死んじゃっ⋯⋯!!」
 ぐずぐずと泣きじゃくりながら何度も強請るザックに、しかし触手は応えなかった。上ってきていた一本もするすると戻っていく。放置される恐怖に怯え、がたがたと震えながら許しを請おうとしたザックの腹が不吉にボコボコと蠢く。
 塊だったそれが解れ、波打つ無数の膨らみに変わった。それは腸壁を押し広げながら下行していく。ザックは壮絶な排泄の予感にヒッと知らず声を漏らし、頬を染めて待ちわびるように尻をひくつかせた。
 やがて、来た道を戻るように結腸の窄まりを超え、熟れに熟れた直腸内へと触手が踊り入ってくる。最奥を特大の凹凸がゾリゾリと捏ねたのをきっかけにザックは喉を反らし、白目を剥いて濁った嬌声を迸らせた。
「――ッン゛ッほォぉぉお゛お゛おッ!! ん゛ほっ!! お゛ゥッほぉ゛っ、ほッ、ア゛ッ!! ぎひぃっ、ひィい゛ひッ! ア゛ッへえ゛ェぇえ゛え゛っ!!!」
 痒くて痒くて堪らなかったソコが無造作に押し潰される。不揃いな粒が強かに削り、引っかき、摘まみ上げて振動する。全く洗練されていない乱暴な手つきでも、今のザックには途方もない至福の快感になった。
(あ゛へぇぇぇっ! あ゛ーーッ! あ゛ぁぁあ゛あ゛ーーッ!! き、った、来だぁッ⋯⋯あ゛ひィぃぃい゛い゛っ!! しゅごい゛ィひぃいッきもぢぃい゛ィぃい゛い゛~~っ!!)
 焦がれるほどに望んだ愛撫がようやくもたらされている。数えきれないほどの子触手が粘膜という粘膜に吸い付き、こそぎ、地獄のようだった痒みを蕩ける快感に置き変えていく。ザックは涎を垂らしてヒィヒィと悦びの声を漏らしながら、体内を蹂躙する産まれたばかりの赤子たちへ、餌となる性感をこれ以上ないほど存分に差し出すことになった。
「へぇぇえ゛え゛っ!! ン゛へェぇえ゛ェエ゛ッ!! あ゛ひっ、ひィっあ゛お゛ォおっ!! しょごぉぉお゛お゛っ!! しょこッい゛ひィぃイっ!! あ゛ーーっあ゛ぁ~~っ!! あ゛っひ、ごれっ、こぇ゛ぇ、しゅごしゅぎぃぃっ!! い゛ひィ゛イ゛ぃい~~っ!!!」
 あまりの悦楽に狂乱するザックを置いて、満足したらしい子触手がぶくっと膨らみ、菊門のふちをわざとらしく擦りながら尻から抜け出ていく。ザックは排泄感よりも掻痒感が満たされる幸福に打ちのめされているのかほとんど反応を示さなかったが、出ていくのが一本、二本と増えるにつれ、部屋中に響き渡っていた声が少しずつ小さくなっていった。
 やがて全ての触手が体内から産み落とされる。ぼちゃ、という鈍い音を最後に、ザックの後ろの窄まりはぽっかりと口を開けたままになった。
 ザックは白目を剥き、舌をだらりと垂らして断続的に痙攣している。笑っているようにすら見えるほどその頬は緩み切っていた。しかし十分もすればその目には光が戻ってくる。まだ僅かに残る痒みと、全身を支配する気だるさ、そして快感の名残に震えながら、ザックはよろよろと視線を動かした。
(お⋯⋯おわ、り⋯⋯? おわっ、た⋯⋯?)
 身体を襲う嵐が去ったことにほっとしながら、触手たちに放してもらおうとしたところで、ザックはくるりと仰向けにされる。
 また細い触手が数本入り込んできた。同じように結腸の奥まで上り、精子を吐き出して抜け出ていく。
 鎌首をもたげて迫る先ほどの極太の触手に、ザックはヒクッと頬を引きつらせた。
「う、⋯⋯嘘⋯⋯こっ、これ、まさか⋯⋯ッ、アールが来るまで⋯⋯まさかぁッ⋯⋯!!」
 想像したくない結論に思い至ったザックが涙を浮かべながら首を振る。しかし触手たちはまるで変わらず、緩み切った菊門へとその竿を突き立てた。
 再び腹の奥まで先端が届けられる。ぶくりと幹を膨らませながら上ってきた、今まさに体内へ入ろうとしている塊がふたつに増えていることに、ザックは今度こそボロボロと泣き出した。
「い゛やだぁあ゛ッ、もぉがゆいの無理ッ、ゃだ、い゛やぁっ⋯⋯――はお゛ぉ゛ぉおっ!!」
 どれだけ拒否しようがザックに逃れる術はない。塊は直腸から更に進み、同じように産み付けられた。ゆるして、ゆるして、とうわごとのように続けるザックを尻目に時間は刻一刻と進み、白濁が尻から伝い落ち、身を焼く地獄の痒みが襲ってくる。
「ひっ!! ひぃっ!! きひっ⋯⋯あがッ⋯⋯あァあ゛ッッ!! がゆ゛いぃっ!! 痒ひぃい゛ぃーーっ!! あ゛ーーッ!!!」
 量が増えた掻痒剤がどぷっ、どぷっと直腸に流れ込んでくる。疲弊し切った身体が更なる痒みに埋め尽くされ、ザックは自由にならない両手足をがむしゃらに動かした。しかし触手の拘束は微動だにしない。解放を許されない拷問にザックは子どものように泣きじゃくった。
「がゆ゛い゛ぃぃ⋯⋯かゆい゛よぉ゛お゛おッ!! ほん゛どに痒いんら゛っでぇぇえ゛ッ!! なんでぇっ⋯⋯だぇか、だれかたすけっ⋯⋯だずげでぇぇええ゛っ!!」
 叫び声は地上まで届かず、暗い地下室にわんわんと響くばかりだ。当然誰にも届くはずがない。わかっていての懇願だったが、しかし――暗がりの奥で物音がした。
 誰かの話し声、そして数名の足音が近づいてくる。ザックは息を詰め、触手に照らされていない闇の先を涙に濡れた目で見つめた。
 松明の明かりが大きくなる。現れた男たちが、ザックと触手を驚いたように指さした。
「おい、なんだこりゃ?」
「お貴族サマが買い付けた魔物じゃねえの。このへん、町屋敷が並んでるトコだろ」
「じゃあ⋯⋯なんだコイツ?」
 汚れたフードに腰巻、品定めするような鋭い目つき。堅気の人間ではないことはすぐに知れた。うちひとりがザックと視線を合わせ、嘲笑を浮かべて近づいてくる。
「ハハッ、魔物に犯されてやがる。ザマぁねえな、ザック」
「⋯⋯ッ!!」
 その男は、ザックがアールの元へ行く使者に選ばれた際に交代しろとしつこく言い募ってきた者だった。王が選出したのは自分なのだから無理だ、と何度言っても聞き入れてもらえず、一度決闘のような形で打ちのめしたことがある。痩せた身体にこけた頬、ネズミのような出っ歯が特徴的な、あまりいい噂は聞かない男だった。
 盗賊団とつるんでいるという話だったがまさかこの連中がそうなのだろうか。なにか言い返すか悩んだが、それより早く痒みが蘇ってきた。
「っ、⋯⋯んくっ⋯⋯う、⋯⋯く⋯⋯~~ッ!!」
 堪えたくとも尻が勝手に揺れる。括約筋が馬鹿になった肛門からボタボタと汁が落ちるのがわかった。閉じられない足の間から、男たちがジロジロと見下ろしてくる。ザックは頬が火でも付いたように熱くなるのを感じた。
「グッチャグチャじゃねえか」
「どれだけ犯されてんだよ、この変態野郎」
「マンコみてえ」
 勝手なことを思い思いに言う男たちのうち、ひとりが指を伸ばしてくる。ぷちゅっと僅かに指先が滑り込んだ。
「ッヒ!! ヒぐっ⋯⋯んぃぃっ⋯⋯クゥう゛ぅ⋯⋯っっ!!」
 たまらない痒みがその一瞬だけは和らぐ。粘膜を擦られる悦びにザックは殺しきれない嬌声を上げた。連動するように収縮する穴からどろどろと白濁が零れて落ちる。男たちは目を丸くし、それから弾けるような笑い声を上げた。
「ブッ、ハハハ!! おいおいっ、なんだよコイツ!」
「ケツ穴で感じてんのかよっ!!」
「マジで笑えるわ、とんだカマ野郎だな! ほれっ、ここがいいのか? ん~?」
「ん゛ッぎィいい゛っ! はぐぅっ! や、やめっ、あ゛へぇぇえ゛え゛っ!!」
 ずぶっと突き込まれて白目を剥いた。こんな連中の前で情けない格好を曝したくない。頭ではそう思っても、掻きむしりたくて仕方ないソコを指で引っかいてもらえるだけで、感情も理性も陵駕する絶対的な快感が襲ってくる。
(かゆいっ、かゆい゛っ、あ゛ァァッ⋯⋯もっとっ!! もっと!! もっどぉお゛お゛ッ!!!)
「あへえー、だってよ。信じらんねえな、これがあの『兄馬鹿』のザック?」
「赤毛だし間違いねえよ。俺がコイツの顔を見間違えるわきゃあねえ。散々コケにしてくれやがって、オラッ!」
「ハァあ゛ッ!! あ゛お゛ぉっ!! お゛ん゛っ、ほへっ、あ゛ひィぃい゛っ!! っひ、い゛ぃ、ん゛お゛ぉおお゛ぉ⋯⋯っ!!」
 一気に三本押し入れられ、襞をこそぐようにして抜き差しされる。身を苛む痒みが一気に快感へと変わり、ザックは先走りを垂らしながら腰を反らした。すっかり勃起した陰茎を叩かれて痛みに悶えたが、すぐに中を抉られる恍惚でわからなくなる。
 悦びに浸るザックを見下ろしながら、出っ歯の男は唐突にズボッと指を引き抜いた。丁度去り際に前立腺を強かに擦られたザックは、間抜けな悲鳴を上げながら容易く絶頂へと導かれた。
「ん゛ッほぉ゛お゛ぉォオ゛お゛おおぉッ!! お゛っ、オ゛ホッ!! おん゛ぉっ、オ゛ッ⋯⋯はおぉ、⋯⋯お゛っ⋯⋯!!」
「ハァ~、こんなド変態だったとは。ケツ掘ってやりゃ素直に言うこと聞いたなこりゃ」
 指にまとわりつく粘液を気色悪そうに払いながら出っ歯はブツブツと呟いた。仲間たちは彼を労うように肩を叩き、それから手に持っている袋を揺らす。
「じゃまあ、せっかくだしこの辺で今回の品を改めようや」
「そうだな。このアホが魔物に弄くられてブッ壊れるのもいい余興になる」
「せいぜいサービスしてくれよ、ザックちゃん」
 そう言って彼らは円を描くような形で座り、袋から金品を取り出し始めた。彼らの行動に真っ青になったのはザックだ。痒みが中和されているのは今だけで、すぐにまた戻ってくる。
 ますます強くなっていく。
(ア゛ッ⋯⋯ア゛ガッ⋯⋯い、いやっ⋯⋯こ、こんな奴らにっみられ、こんな奴らの前でッ⋯⋯ヒィぃい゛ッ!! ぜ、絶対⋯⋯嫌だぁッ⋯⋯!!)
 ガタガタ震えながら必死に耐える。後ろから湧き起こる壮絶な痒みが、まるで拍動でもするかのように繰り返し押し寄せ、時間が経つごとに強くなっていくのを、噛み締めた唇に血を滲ませながら耐え忍いだ。
(ぎっ、ひっ! ヒッ! ひィっ! はひっ、ひい゛っ、がゆっ、かゆ゛ぃっ、かゆい゛ィぃぃ⋯⋯ッ!! かゆいかゆィかゆいィ゛ィっ!! ひぃ゛ぃぃぃい゛いっ!!)
 中を濃厚な掻痒剤が伝う。延々と伝っては、撫でるようなもどかしい性感をもたらし続ける。
(耐え゛る゛ぅっ! ぜっだ、ぜっだい⋯⋯あ゛ァあ゛あ゛あッ!! がゆ゛ぃぃぃぃい゛い゛っ!! ごんな、ごんな゛奴ら゛ぁあッ!! 痒い゛ッ、痒いッ、痒ッ⋯⋯あ゛~~ッッ!! い゛や゛だぁあ゛あ゛ああッ!!!)
 心でどれだけ否定しても、身体は正直だった。今や自由にならない腰を無意識にヘコヘコと揺らしながら、垂れ落ちてくる汗の刺激にすら頻りに痙攣して悦んでいる。生粋の好き者のようなソコは真っ赤に潤み、掻きむしられる瞬間だけを今か今かと待ち望んでいた。
「ふーっ⋯⋯ふうぅーっ⋯⋯!! うふぅーっ⋯⋯っく、ふッ⋯⋯ううぅぅッ⋯⋯!!」
 吐息はそれ自体が喘ぎ声のように濡れていた。ザックは目を閉じ、歯を食いしばり、この地獄が過ぎ去るのをただひたすらに待っていた。
 出っ歯の男はそんなザックの頬を叩き、むりやりに目を開けさせる。
 彼は片手に持った高級そうな羽ペンを揺らしてわざとらしく笑った。
 気が狂いそうなほどの痒みに侵されているそこへ、触れるか触れないかという距離で羽の先が揺らめく。
「可哀そうにな。痒いのかあ? 優しい俺が慰めてやるよ」
「ふっ、うっ、や゛めッ⋯⋯ん゛ひィィっ!!」
「ほれ」
「はっ、ひィぃッ!!」
「それそれ」
「ん゛ほッ、お゛ッ! やえ゛ッ⋯⋯ひぎゅっっ!! くふぅぅ゛う゛っ!!」
「もういっちょ」
「ふぅぅう゛~~ッ!! う゛っ、う゛ぅっ、ひっ、ひっく⋯⋯ヒィぃい゛ーーっ!!」
(あ゛ぁあ゛あ゛あぁぁ~~ッ!!! も゛っどぉぉお゛お゛っ!! お゛ぐっお゛ぐっ奥しでぇえ゛え゛っ!! 奥痒いの゛ぉっ!! 痒い゛っかゆ゛い゛かゆィかゆっ、ひぃぃいっ!!! もっどお゛ぉ゛ぉォぉ⋯⋯っ!!!)
 ザックが涙と鼻水を撒き散らしながら悶え狂うのを、男は心底馬鹿にして笑った。ひょいっと羽ペンがそこからどかされると、ザックは真っ赤に濡れた目で無意識に媚びるように男を見上げる。男はザックの頬を羽で撫でながら言った。
「ほぉら、ちゃぁんとどうして欲しいのか言いな。叶えてやるぜ? 俺は優しいからよぉ」
「お、おま、お前、なんかにっ⋯⋯ヒィッ!!」
「お前じゃねえだろ。マドックス様だよ。言ってみな」
 反抗的な態度を取ったとたんに尻を打たれ、ザックはあまりの悔しさに溢れ出る涙を抑えられなかった。どれだけ泣いたところで痒みは変わらず襲ってくる。中を引っかき回すモノが欲しくて欲しくてたまらなかった。この痒みを忘れさせてくれるなら悪魔に魂を売っても構わないとすら思ってしまう。
(欲じい゛っ、ほしい゛、ほしぃ⋯⋯畜生ッ、ちぐじょぉおお゛ッ!! あ゛ッ、ア゛、あ、⋯⋯あ゛ぁ゛あアア゛ッ!!! も゛ぉ、もう゛ら゛め゛へぇぇえ゛え゛ッ!! もぉ無理ぃぃい゛い゛いっ!!!)
「っく、ふぅっ、ひっぐ⋯⋯くっ、ま、⋯⋯まど⋯⋯マドックス、さ、ま⋯⋯ッ」
「そうだよ。俺にどうして欲しいんだ? イロイロできるぜ、俺はよぉ」
「ッんは、あっ、あっ!」
 こん、と勃ち上がった一物で尻穴を小突かれる。貫かれる期待だけでひとりでに軽く絶頂した。コレで痒いところを抉ってもらえる。ゴリゴリって、いっぱい、いくらでも。そんな淫靡な夢想が頭を溶かし、正常な判断力は霞のように消えていった。
「こ、これぇ、くださっ⋯⋯入れてくださぃッ俺、俺の、なかにっ⋯⋯」
「コレとかナカとか分かりゃしねえよ、ちゃんと口で言え。エロくな。俺が入れてやってもいいかなって思うように言えよ」
「へ、えっ、えろ⋯⋯えっ⋯⋯?」
(な、なに⋯⋯? なに、わからな⋯⋯っひ! あ゛! もっ、痒ッ⋯⋯痒い゛ぃぃッ!! 早く、早くチンポぉッ⋯⋯はや゛ぐ入れ゛でぇええ゛え゛ッ!!)
 ザックが驚いたように目を丸め、続けてくしゃりと顔を歪める。それを見た出っ歯の男は一瞬呆気に取られたようすだったが、演技がかった動きで肩を竦めると、ザックの耳もとへ口を寄せた。
 そこで囁かれる単語に何度も頷き、ザックは精一杯股を開きながら眉を下げ、涎を垂らして媚びるような笑みを浮かべながら言う。
「ま、マドックス様の、デカくて硬い、オチンポ様ッ! 田舎者の赤毛のっ! バカで間抜けで、どうしようもない淫乱のぐずぐずケツマンコに入れてくださいっ!! オチンポ様で躾けてくださいぃっ! あ、あのとき、断ってすみませんでしたぁッ! 俺みたいな変態野郎がっ、マドックスさまの言うこと聞かないの間違ってましたッ! か、身体でお詫びしますっ、いくらでもズポズポしてください、俺のことっ、壊してっ、ケツマンコ潰してッ! 早く入れてッ、オチンポほしっ⋯⋯ほしいですっそれないと生きてけないっ、なんでもするっお願いしま゛ずぅぅっ!!」
 大声で卑猥な言葉を恥ずかしげもなく叫ぶザックに、出っ歯の男は勿論、その仲間たちも手を叩いて大笑いした。ザックは大粒の汗をかき、ぜえぜえ息を吐きながら許しを請うように目の前の男を見上げる。
 男は扱く必要すらないほど勃起した一物をそっとザックの後ろへ押し当てた。それだけでザックはヒクヒクと痙攣しながら腰を振ったが、ずぷ、と僅かにうずめてもらえると、耽溺したように顔を蕩かせて甘ったるい声を響かせた。
「はお゛ぉっ⋯⋯! んっはぁあ゛あぁ⋯⋯ッ、あっ、あはっ⋯⋯あへえ゛ぇっ⋯⋯!!」
「ほらどうだよ、ちゃんと言え」
「あ、へ、⋯⋯ッけ、ケツマンコぉ⋯⋯イィれ゛すっ、チンポ、オチンポしゃま、擦れっ⋯⋯はう゛ぅぅっ!! あ゛っ、もっと、もっと奥ッ⋯⋯くらさ、もっどぉ⋯⋯ッ!!」
「俺のチンポがどうイイんだよ? 言わねえとこうだぞ?」
 出っ歯がくいっと腰を引くと、今にも抜かれそうなほど浅くなった一物にザックが悲鳴を上げ、追いすがるように尻を持ち上げた。
「抜がな゛いれ゛ェぇええ゛ッ!! や゛ら゛っ、いやれ゛すッ言いまずう゛ぅッ!! お、オチンポ様っ硬くて、亀頭ぶくってしてるのイイッ、ケツマンコの入り口っムリヤリ広がるの、擦られんの好きッ、大好きぃっ!!」
「先っぽだけか? 先っぽ入りゃそれでイイのか?」
「やら゛ぁあ゛あ゛あッ!! か、カリも好きれ゛すぅぅっ!! 入るとき、出るときもぉっ、ケツマンコの中ぁっえぐるみたいに引っかいてっ!! スゴ、しゅごい善くてぇッそれだけでイぎまずぅぅっ!! ズポズポされんの好きっあ゛ア゛ッしょれ、しょれぇえ゛え゛えっ!! ぇへえ゛え゛ぇぇっ!! 嬉ひい゛れ゛ずう゛ぅぅう~~っ!!」
 男の機嫌を少しでも損ねようものなら、痒すぎて発狂しそうなところを掻いてもらえずに引き抜かれる。ザックは口元に緩んだ笑みを張り付け、血走った目で男の表情をつぶさに見て取りながら、男が笑い、嘲り、愉しむように言葉を変えた。まるで通行人から餌をもらおうと足元へ縋りついて腹を見せる野良犬のようだ。男がザックの頭を撫でると、ザックは安堵でまるで呆けたように笑い返した。
「どこがイイんだ? お前の好きなトコは?」
「あ゛っ! あへっ! しゅぎな゛とこぉっ! お゛ッ、オチンポしゃまのっ、反り返ったトコロ、あ、浅いとこのっ! お腹側のぉ⋯⋯ん゛へぇぇえ゛っ!!? はひィい゛ぃっ!! しょごれ゛ずぅう゛ぅうっ!! ぎも゛ぢひぃぃィイ゛いっ!! あ゛~~ッ!! イ゛グッ!! イ゛ッ⋯⋯あ゛っへェえ゛え゛えっ!! グリグリいィよぉぉお゛お゛っ!! いぐっ、いぐぅぅうう゛う゛っ!!!」
 男が言うとおりに前立腺を捏ねるとザックは泡を噴いて反り返った。緩かった後腔がきつく締め上げてくる。粘液に満たされた熱い肉筒はこれまでに味わったことがないほど心地よく、出っ歯の男は身を強張らせ、うっ、と低く呻いた。
 精液がぴゅくっと噴き出す。体内に流し込まれたそれはすでにしとどに濡れた白濁と混ざってわからなくなった。男が引き抜くと、いつの間にか後ろに立っていた仲間たちがいそいそと股間を寛げてくる。
「あん? なんだてめえらもヤんのかよ?」
「こんなブッ壊れた淫乱とヤれることってそうないし」
「はは、違いねえ。一発で済ませるからよ」
 仲間たちの態度にしょうがねえなあと男が頭を掻く。ザックの股の間からどこうとしたところで、今の今まで犯していた腹の異変に真っ先に気づいた。
 ボコボコと波打っている。まるで皮膚の下に別の生き物が這っているようだ。それはへその下からゆっくりと下り、やがて鼠径部のそばへまで達した。ザックは男に犯された余韻が消えないまま、結腸を探られる感触に悦びの声を上げて悶える。
「んへぇっ! き、来たぁあ゛っ! ケツマンコっ、ぜんぶっぜんぶ引っかいてくれるの来たぁっ! 奥もぉ、奥も⋯⋯ヒィッ! お゛へぇっ!! 来るっクるクる゛っ、ん゛ほォぉお゛オ゛おっ!!」
 一回目よりもはるかに多くの子触手が、我先にと直腸へ雪崩れ込んでくる。粒々の竿に、かえしに、ザラつく吸盤に、食い込む硬い突起に、ありとあらゆる淫具に人間の性器では届かなかった箇所までほじられ尽くしたザックが、随喜の雄叫びを上げながら潮を噴いた。
「ほォ゛ぉ゛オォぉお゛ッ~~!! ン゛お゛ぉぉッおォおーーッ!! はっへぇぇえ゛エええッ!! っしょ、しょっこ、オ゛ン゛ん゛んッ!! お゛ッぐゥぅう゛う゛う⋯⋯!! ケツマ゛ンコぉォオおッ!! おくっ、ぃちばんっお゛くのぉ、弱ぃトコッ!! 掻いでも゛らへて、し、しあわへっ⋯⋯ッ!! きもちひっ⋯⋯ぃッ⋯⋯ッほぉんぉお゛ぉぉッ!! イ゛イ゛どこぉぉっ!! じゅぽってぇえ゛、じゅぽってなんろ゛もッ⋯⋯なんろ゛も゛ぉおオおぉッ!! あだま溶けッア゛っがあああぁぁっ!! もっわがんなっ、わがんないのぉォお゛お゛おッ!! イ゛っきゅぅう゛う゛ウううーーッ!!!」
 びしゃびしゃと潮が床に広がっていく。ザックは動けない身体を限界まで引き攣らせ、痒みを陵駕する圧倒的な絶頂感に浸りきっていた。肛門からはひっきりなしに白濁が汚い音を立てながら溢れ、やがてまるまると太った小さな触手が産み落とされる。
 男たちは笑うのをやめ、関わりたくないものに関わってしまったような顔になっていたが、出っ歯の男がそれを拾い上げると全員で見下ろした。
「なんだこりゃ⋯⋯?」
「魔物のガキだな。孕まされてたんだろ」
「ハハ、とんでもねえ⋯⋯。こりゃアイツも正気じゃいられねえな。俺らもさっさとずらかろう⋯⋯ッ!?」
 子触手を手に持っていた男がピタリと動きを止める。周りの者がどうした、と尋ねる前に、子触手が飛び上がって次々に乗り移った。
 細い針を刺していく。ほとんど痛みのないそれは強力な催眠性を持つ毒を含んでいた。
 瞬時に脱力してくずおれていく男たちを、足元の触手たちが抱き留める。彼らが服を脱がされている間、ザックは子どもたちに延々と蹂躙され、喉を枯らしながらもどこがイイかを辛うじて口にしていた。
「ケツマンコぉ゛ぉほォぉお゛っ!! ずぼずぼ、じゅぽじゅぽぉ゛ぉっ!! ん゛へえっはへえ゛え゛っ!! ぎもぢい゛ィぃいい゛っ!! い゛ぐイぐイっ⋯⋯い゛ぎま゛ひゅううウ゛う~~ッ!! 引っががれ゛るのぉォぉっ!! こりこりッしゃれ゛るの゛ぉぉっ!! つぶしゃれてっねっとりこねこねされるのい゛ひぃィぃッい゛い゛っイぐぅ゛ぅ゛ゥぅっあ゛ーーッあ゛ーーっあ゛~~っ!!! あ゛へぇえ゛え゛エ゛ぇえ~~っ!!!」
 ザックの声に応えるように幼体たちが責めの手を変える。快楽一色に染まった脳みそでは何一つ思考できず、ザックはひたすらにイかされながら痙攣した。
 満足した触手がぬぽ、ずぽっと抜け落ちていく。ザックの喉が掠れ切り、しゃがれた鳴き声しか出せなくなった頃に、最後の一本が落ちて、またぽっかりと空洞ができた。
 そこへ同じように、精子を注入する触手が伸びてくる。
 それの後ろに控えた極太の触手が今度はみっつの塊を備えていることに、ザックは力なく笑う。それからがっくりと項垂れ、奥へと上ってくる触手の感触に、ひっひっと掠れた吐息を漏らした。


 足音が近づいてくる。
 靴音はなく素足だ。真っ暗な空間がランプによって照らされると、その場の全容が浮かび上がってくる。
「殖えたな」
 美しいボーイソプラノはどこか感心したような響きを含んでいた。
 床は勿論、壁、天井に至るまで、びっしりと触手が埋め尽くして蠢いている。よく見ると見知らぬ人間が触手に呑まれた肉塊となっていて、素足の主――アールは訝しそうに彼らを見遣った。
「なんだこいつらは。どこから来たんだ。⋯⋯通路の先も見ておくべきだったな」
 アールは気負うことなく触手の絨毯を踏みしめて、その中央で腹を膨らませている赤毛の青年、ザックへと近づいていった。
「何回産んだんだ?」
 問いかけに顔を上げない彼に首を傾げ、その顎をとらえて上を向かせる。ザックの表情は虚ろで、アールに数発頬を打たれても変わらなかった。
 仕方ないと言わんばかりにアールは彼の腹へと手を翳し、そして片眉を吊り上げる。何も言わずにそこへ手を当てると、淫紋が不可思議な光を放った。
 同時にザックががくんっと跳ねる。息を呑み、その濁り切った瞳へわずかな光を宿した。
「何回産んだと聞いた」
 再度同じことを尋ねるが、ザックはのろのろと口を動かすだけで声を漏らさない。アールは苛立たしげにその頬を張ってさらりと「また放っておいてやろうか」と言った。
 ザックは声にならないような声で返す。
「わ⋯⋯か、ら⋯⋯な⋯⋯わか、らなぃ⋯⋯」
「この連中に犯されたな」
 アールが肉塊を冷たく一瞥すると、ザックの目がじわりと濡れる。もはや涙にもならず、ザックは俯いて繰り返し謝罪した。
「⋯⋯め、なさ⋯⋯ごめっ⋯⋯な⋯⋯」
 アールが気分を害しているらしい。ここへまた放置されるのだろうか。思い浮かぶのは地獄のような痒みだった。
 出産と種付けのとき以外は延々と苛まれた。どれだけ叫んでも、喚いても、壊れたように笑っても黙り込んでも、何をしようが何一つ変わらなかった。かゆい、という三文字に脳みそを支配される。出産した回数を覚えていないのは本当だった。卵が七か八を超えたあたりでそれ以上入らなくなり、後は個数が据え置きのままだった気がするが、それすらもしかしたら九か十だったかもしれず、確かなことは言えなかった。
(死⋯⋯んだほ、が⋯⋯まし⋯⋯)
 ザックの身体は度重なる蹂躙で完全に困憊し、ズキズキとした鈍い筋肉痛が全身に広がっていた。アールとの行為のときとは根本的に異なり、痒みの苦しみと産みの快楽が絶えず繰り返され、休ませてもらえないのがつらかった。もうあと僅かでもされたら精神が壊れそうだったが、ザックはアールにつけられた淫紋の効果で気絶も発狂もできない。だから死ぬほうが早いんだろうな、と頭のどこかで思っていた。
 弱り切ったザックをじろじろと見つめたアールが、こんもりと膨れた腹を見下ろして、そうっと自身の陰茎を扱く。そのまま爛れた後ろに宛がわれてもザックは何の反応も示さなかった。
 緩み切った穴に太い一物が押し入っていく。従順に開いた中は焼け爛れたように崩れ、もはや擦られても痛みしかもたらさないような状況だったが、それでもザックはひーっと吐息だけで嬌声を漏らした。
 ゆっくりと抜き差しされる。痒みがましになっているのかどうかさえ、今のザックにはほとんど知覚できなかった。アールはしばらく考えるように顎へ手を当て、触手たちに指示を出す。
 一本の触手がザックの開きっぱなしの口に入ってきた。とぷとぷと液体が吐かれる。水のように透き通ったそれは口の端からぼたぼたと落ちた。少しも飲み込まないザックに呆れたような顔をしたアールが、無理矢理頭を固定して注ぐと、今度は気道へと滑っていく。
 ザックは咳の一つもしなかった。
「⋯⋯おい。死ぬ気か。疲れたんだろうが、お前が死んだら家族とやらはどうするんだ?」
「⋯⋯⋯⋯」
 ザックの喉の奥でゴロゴロと音が鳴っている。肺の奥へ液体が入ってしまったが故の異音だったが、ザックは苦しそうにすらせず、ただぐったりと力なく倒れていた。
 アールは初めて困惑したような表情を浮かべる。
 解けない課題を眺める子どものような顔だ。苛ついているような、助けを求めているような、曖昧な表情。もう一度ザックの頬を張り、反応がないのを確かめてから、アールは腹に手を添えた。
 そして、ザックに口づける。
「⋯⋯ん⋯⋯」
 アールの手のひらから魔力が流れ込んだ。
 それは呪われた力ではなく、生き物に活力を与える純正な療術だった。唇からは精気を注ぎ込む。時間をかけ、辛抱強く続けると、ザックがふいに身じろいだ。
 ごほっ、と咳をする。
「う、げほっ⋯⋯ご、ほっ⋯⋯えほっ! ぐ、⋯⋯けほっ⋯⋯は、ぇ⋯⋯」
 ザックが液体を吐き戻し、肩で息をするのを見届けたアールの目元が緩む。触手に背中を叩かせ、流れ込んだ液体がすっかり出ていったのを確認してから、「口を開けろ」と指示を出した。
 ザックは大人しく僅かに開口する。そこへ先ほどの触手が入り込み、また同じように汁を分泌した。今度は赤子に飲ませるようなペースで。
「飲め。嚥下しろ」
「ん⋯⋯っ、く⋯⋯こくっ⋯⋯こくっ⋯⋯」
 喉を鳴らして飲むうちに、ザックはその液体がほのかに甘いことに気づいた。飲みやすい、もっと飲みたくなる。舌を伸ばして吸い付くと、触手は吸っただけ分泌してくれた。
 渇いた喉や身体に染み入っていく。ほっとして息を吐くと、いつも通りの無表情なアールが彼を見下ろしていた。
「あ⋯⋯ーる⋯⋯」
「無駄に喋るな。注いだら寝かせてやる」
 そう言われて、ザックは初めて自身がアールに貫かれていることを知った。感触が普段とまるで異なるためにわからなかった。
「ち⋯⋯が⋯⋯?」
「ああ。少し変えた。どうでもいいことだ⋯⋯黙っていろ」
 そう言うが、アールのものは常時とは明らかに違う。細く、凹凸がまるでないつるりとした形だ。まるで普通の人間の持ち物のようだった。抜き差しされてもじんわりとした快感が広がるだけで、ザックは揺らされながらぼうっとそれに浸った。
 アールは眉根を寄せ、苦しそうにしている。この状態で射精するのは彼にとってかなり困難だった。諦めが脳裏を過ぎった頃に、淫紋が刻まれた腹が不自然に波打つ。そしてザックが引き攣った悲鳴を上げた。
「ま、またっ、またぁ、ゃっ、いや、もう⋯⋯ぃやだぁ⋯⋯っ」
「動くな、大人しくしろ」
「ゆるし、ゆるしてっ、ゆるし⋯⋯ひっ⋯⋯ころして、も、ころしてぇっ⋯⋯」
 ぐずぐずと泣き出したザックを細い手で抱いて、アールは仄かな興奮に頬を染めた。いけると判断したのか、打ち付ける速度が上がる。アールの性器を咥えてもなお余裕がある直腸へ夥しい量の子触手が流れ込んできた。性器にまとわりつかれながらアールは最奥をぐちぐちと潰す。ザックは幼気な子どものように甲高い喘ぎを漏らし、いつの間にか拘束を解かれた両手でアールの腕を掴んだ。
「あ⋯⋯あっ⋯⋯んはっ⋯⋯はひっ⋯⋯はぁぁっ」
 触手たちに崩れた粘膜を捏ねられて、痛みと快楽がない交ぜになって襲ってくる。絶頂には到達できなくなっていた。ザックが揺さぶられる度に手の中の腕を握り込んでいると、やがてその腕は柔らかな手のひらに変わり、弱い力で握り返してくる。
 ぱん、ぱん、と皮膚が打ち合わされる音が響いた。アールがザックのすぐそばまで顔を寄せ、小さな声で囁く。
「出すぞ」
 ザックがほとんど意識せずにコクコク頷くと、その射精は始まった。
 濃い精液が奥へと掛けられ、淫紋がドクンと拍動する。主人からの精を受けて悦びの絶頂が全身を駆け抜けていく。普段よりもかなり鈍く、緩やかな絶頂感だったが、それでも心地よさに変わりはなかった。
「っぁぁ⋯⋯き、もち⋯⋯ぃ⋯⋯っ⋯⋯」
 曖昧だった脳みそが快感一色に染め上げられる。痛みが消え去り、蕩けるような恍惚だけが身体を包んで支配した。陶酔の声を上げるザックを見下ろしながら、アールは淫紋へと視線を向ける。
 それは瞬くように煌き、そして突如滑るように形を変えた。
 不明の紋様から、剣と盾らしき装飾を帯びた外観へと。
「⋯⋯よし。寝ろ」
 アールが命令し、ザックの瞳に手を翳す。途端に意識に幕を下ろすような眠気が襲ってきた。
 急激に視界が暗転する。気を失う間際、股の間からぼとぼとと未熟な触手たちが落ちていたが、アールはそれを拾い上げて肉塊の方へと向かわせていた。

TOP